目次

 オフィスにおける「通路の渋滞」は、目に見えにくいが確実に存在する“隠れコスト”です。

狭い通路、すれ違えない動線、荷物を持って通りにくいスペース……。これらは日々の小さなストレスとなり、業務効率を低下させるだけでなく、従業員の心理的負担や人間関係のトラブル、最悪の場合は労災リスクにもつながります。

なぜ狭いオフィスの通路は問題なのか?

  1. ストレスの原因になる(「通れない」「よける」ことへの心理負荷)。
  2. 作業中の干渉が起きやすくなる(椅子の背後を通れない、ぶつかるなど)。
  3. 集中力が下がる(背後に人が近すぎると、心理的に安心できない)。
  4. 労災リスクが上がる(通路での衝突、転倒事故など)。

オフィスを道路に例えるとわかりやすいでしょう。高速道路に見合わない片側一車線、歩行者動線がない商店街――そんな設計ミスが職場環境で起きているとしたらどうでしょうか。特にオフィス移転時には、これまでの“通路問題”を根本から見直し、快適で効率的な動線を設計する好機です。

施工型パーテーションを活用したゾーニング設計は、ただの仕切りではありません。人の流れ、視線の抜け、音の通り方、安全動線の確保まで、多角的な視点で空間を最適化するための強力なツールです。本稿では、通路の問題を中心に、オフィス移転時に注目すべき5つの改善ポイントを解説します。

1. 「動線デザインの科学」パーテーション配置が変える人流効率

 快適なオフィスづくりの鍵は、「人の流れ=人流(ヒューマン・トラフィック)」をどう設計するかにかかっています。

パーテーションは壁であると同時に、動線をデザインする「誘導装置」です。施工型パーテーションの特性を活かし、人の流れを制御・最適化することで、オフィス全体の生産性を向上させることが可能になります。

オフィスの導線幅:推奨寸法と理由

オフィス内装設計の専門家が推奨する導線幅(通路幅)には明確な基準があり、それは業務効率・安全性・心理的快適性の3点を考慮して設定されています。以下に、推奨寸法とその理由を解説します。

メイン通路(幹線通路)

  • 推奨寸法:1,200~1,500mm(1.2〜1.5m)
  • 理由:
    • すれ違い可能な幅:人同士がストレスなくすれ違える(肩が触れない)のは1,200mm以上。
    • 荷物搬送・台車移動:荷物カートや什器搬入にも対応できる。
    • 避難動線の確保:非常時にも安全に退避できる通路幅としても有効。

サブ通路(各デスク間・部屋間の接続通路)

  • 推奨寸法:900~1,000mm
  • 理由:
    • 一人通行として十分な幅。壁や家具にぶつからず、自然な歩行が可能。
    • デスクから椅子を引いても、後ろを人が通れるギリギリのラインが900mm。

個人デスク背面の通路幅

  • 推奨寸法:1,000~1,200mm
  • 理由:
    • 椅子を引いた状態(600〜700mm程度)でも、後方通過が可能。
    • 集中力の維持:背後を人が通る圧迫感を避けるためにも余裕が必要。

会議室・応接室まわりの通路

  • 推奨寸法:1,200~1,400mm
  • 理由:
    • 来客がスムーズに移動できるゆとり設計。
    • 車椅子の通行(JIS規格で800mmが最小通行幅)も視野に入れる場合、より広めに設計する。
通路の種類推奨寸法主な理由
メイン通路1,200〜1,500mmすれ違い・台車搬送・避難対応
サブ通路900〜1,000mm一人通行、デスク間通行
デスク背面通路1,000〜1,200mm椅子後ろの余裕、圧迫感の軽減
会議室まわりの通路1,200〜1,400mm来客・バリアフリー動線への対応

パーティションによる改善事例:

  1. メイン通路の確保:中央に幅1.5m以上の通路を設けることで、すれ違い渋滞を防止。資料搬送や来客時の移動もスムーズに。
  2. 島型デスク配置との連携:通路を囲むようにデスクゾーンを配置。パーテーションを背面に設けることで、動線と作業ゾーンを明確に分離。
  3. 一方通行の回遊動線:パーテーションで回遊ルートを設計し、すれ違いを最小限に抑えることでストレスを軽減。

パーテーションの設置位置ひとつで、オフィスの“交通渋滞”は大幅に改善されます。これは一時的な解決策ではなく、設計段階からの「人流制御」という根本的なアプローチなのです。

2. 「心理的圧迫感」を数値化する音と視覚の制御術

 人は視覚と聴覚の情報から空間を感じ取っています。

狭い通路に物が密集し、会話や電話の声が反響している空間では、それだけで「圧迫感」や「緊張感」を抱いてしまいます。こうした“感覚のストレス”を軽減するには、視線・音の制御が重要です。

パーテーションで実現する心理的快適空間:

  1. 視線のコントロール:半透明パネルや上部抜けの設計で、視線を遮りながら開放感を確保。
  2. 吸音パネルの活用:施工型パーテーションの内部に吸音材を仕込むことで、反響音を軽減し静謐な空間を実現。
  3. カラートーンによる錯覚活用:視覚的広がりを感じさせる明るい色や素材感を取り入れたパネル選定で、空間の「圧迫感」を緩和。

こうした設計的工夫は「働きやすさ」に直結します。音や視線が制御された空間では、集中力が高まり、会話もスムーズになり、結果として生産性が向上します。

3. BCP対策に直結する「安全通路」の新基準

 BCPとは災害などの緊急事態における企業や団体の事業継続計画(Business Continuity Planning)のことです。

近年ではBCPの観点からも、安全な通路の確保が求められています。災害や火災が発生した際に、スムーズな避難経路を確保できるかは、日常の動線設計にかかっています。

施工型パーテーションによる安全設計のポイント:

  1. 避難通路の「視認性」:ガイドラインに準拠した避難動線はもちろん、光透過型のパネルや誘導サインの一体設計で、緊急時の視認性を確保。
  2. 可動式+固定式の併用:一部を可動型にすることで、非常時には大きく動線を確保できる柔軟性を持たせる。
  3. 消防法・建築基準法への対応:建築確認申請の落とし穴を避けるため、構造・素材・避難経路の幅などを専門的にチェック。

パーテーションによる通路設計は、単なる日常の利便性だけでなく、非常時の安全確保にも直結しています。オフィス移転時はこの視点からの再設計が不可欠です。

4.「コスト対効果」を検証する10年シミュレーション

施工型パーテーションは一見すると初期費用が高く見えますが、長期的なライフサイクルで見れば、ROI(投資利益率)は極めて高くなります。

10年視点のライフサイクルコスト分析:

  1. 年間業務効率の向上による時間コスト削減
  2. ストレス軽減による離職率低下と採用コストの抑制
  3. 設備投資のメンテナンスコスト比較(LGS造作壁vs スチールパーティション vs アルミパーティション)
  4. 移転・再利用を見据えた可変設計による資産価値の維持

たとえば、年間1人あたりの移動ストレスにより失われる時間が1日5分だと仮定して、100人規模のオフィスでは年間約2,000時間以上の損失になります。これを効率化すれば、人件費に換算しても数百万円の差が出る可能性があります。

5. 未来対応型オフィスの核心 「空間の再定義」としてのパーテーション活用

 現代オフィスは、単なる作業場ではありません。「集う」「集中する」「創造する」など、多様な行動を受け止める“多機能空間”であるべきです。その柔軟性を支えるのが、施工型パーテーションによる空間の再構成力です。

未来対応型オフィスのための設計提案:

  1. ゾーニングの可視化:部署・チーム・目的別に空間を構造化し、動線でつなげる設計。
  2. グリーン&サステナブルとの融合:吸音・視覚効果を高める“フェイクグリーンパーテーション”の導入。
  3. テクノロジーとの接続:IoTセンサーと連携した空調・照明の効率化設計。

施工型パーテーションは、単なる“間仕切り”ではなく、空間そのものの定義を塗り替える力を持っています。

まとめ:「オフィス移転は空間の再定義」

 オフィス移転は、単なる「場所の変更」ではなく、「空間の再定義」の絶好のチャンスです。そしてその中核となるのが、施工型パーテーションを活用した空間設計です。

通路の渋滞を解消し、動線を最適化し、心理的ストレスを軽減し、災害にも強い安全設計を組み込み、そして未来の働き方に対応する多機能空間を実現する。すべては、設計段階から“通路”という基本に向き合うことから始まります。

「通れない」は、働けない。
「通路」を制する者が、オフィスを制する。

その第一歩として、「間仕切.jp」が提案するパーテーション設計をご活用ください。

間仕切.jp

フリーダイアル 0120-020-720

東京都千代田区岩本町3-8-16 NMF神田岩本町ビル6F アイピック株式会社

JR「秋葉原」駅昭和通り口 徒歩6分/都営地下鉄新宿線「岩本町」駅A4出口 徒歩2分/東京メトロ日比谷線「秋葉原」駅4番出口 徒歩4分