目次

 薬局という専門性の高い空間では、機能性、安全性、患者様のプライバシー保護、スタッフの動線効率、そして快適性が何よりも重要です。さらに、近年では働き方改革への対応や、感染症対策としてのゾーニングの重要性も増しています。

本コラムでは、皆様が理想とする薬局空間を実現するため、内装間仕切りのパーティションの有効性をはじめ、空間設計における重要なポイントを4つの見出しに分けて詳しく解説いたします。

1. 薬局空間に求められる要件とゾーニングの重要性

 薬局のレイアウトを検討する上で、まず明確にするべきは、その空間が持つべき「機能」と「役割」です。

待合室(受付・お渡しカウンター)、調剤室、休憩室、スタッフ用事務室は、それぞれ異なる目的と特性を持つため、適切なゾーニングが不可欠です。

(1)待合室(受付・お渡しカウンター)

患者様が最初に訪れる場所であり、薬局の「顔」となる空間です。ここでは、以下の要素が重要となります。

  • 開放感と安心感の共存: 広々とした空間は患者様にリラックスをもたらしますが、同時にプライバシーにも配慮が必要です。パーティションを効果的に活用することで、圧迫感なく個別の相談スペースや問診スペースを設けることが可能です。
  • ●受付/お渡しカウンターの機能性: スムーズな受付業務と、薬の受け渡し、そして金銭の授受が効率的に行える設計が求められます。患者様とスタッフ双方の動線を考慮し、プライバシー保護のための工夫も必要です。パーティションでカウンターを区分けすることで、視覚的なプライバシーを確保しつつ、業務効率を損ないません。
  • ●感染症対策: 感染症流行時には、咳エチケットやソーシャルディスタンスの確保が不可欠です。パーティションによる飛沫防止対策や、空間の分割は、患者様とスタッフの安全を守る上で極めて有効です。例えば、アクリルパーティションやガラスパーティションでカウンターを仕切ることで、物理的な障壁を設けつつ、開放感を損なわない工夫が可能です。

(2)調剤室

薬局のコアとなるスペースです。医薬品を安全かつ正確に調剤するための厳格な環境が求められます。

  • セキュリティと清潔性: 医薬品の管理、調剤作業の正確性を確保するため、関係者以外の立ち入りを厳しく制限できる構造が必須です。また、清潔な環境を維持するための素材選定と、清掃しやすい設計が重要です。
  • ●作業効率: 薬剤師や調剤補助者の動線を最小限にし、スムーズな調剤作業を可能にするレイアウトが求められます。薬剤の保管場所、調剤台、監査スペースの配置など、作業ステップに応じた配置が生産性向上に直結します。
  • ●プライバシー保護: 患者様の個人情報や疾患に関する情報が飛び交う場所であるため、外部からの視線や会話が漏れることを防ぐ配慮が必要です。遮音性の高いパーティションや、不透明な素材のパーティションが有効です。

(3)休憩室

スタッフの心身の健康維持とリフレッシュのための重要な空間です。

  • ●リラックスできる環境: 業務の合間にしっかりと休憩が取れるよう、外部からの干渉を受けにくい静かで落ち着いた空間が必要です。
  • ●機能性: 食事や着替えなど、多様な用途に対応できる柔軟なレイアウトが求められます。必要に応じて、簡易的なロッカーを設置することも考慮します。

(4)スタッフのデスクワーク用事務室

事務処理や情報管理など、薬局運営に不可欠な業務を行う場所です。

  • 集中できる環境: 業務に集中できるよう、静かで落ち着いた環境が求められます。
  • ●情報セキュリティ: 患者様の情報や薬局の機密情報を取り扱うため、情報漏洩を防ぐための物理的・視覚的なセキュリティ対策が重要です。パーティションで個別のデスクスペースを確保することで、集中力向上と情報セキュリティの両立が可能です。

(5)風除室

薬局の入り口に設けることで、外部からの風やホコリ、騒音、冷気・暖気の侵入を防ぎ、待合室の快適性を高める役割があります。

  • 省エネ効果: 空調効率を高め、電気代の削減にも寄与します。
  • 快適性の向上: 外部からの不快な要素を遮断し、患者様が安心して過ごせる空間を創出します。
  • 感染症対策: 外部からのウイルスや花粉の侵入を抑制する効果も期待できます。

これらの各空間の要件を踏まえ、パーティションとLGS造作壁の特性を理解し、最適なゾーニング計画を立てることが、薬局の成功に直結します。特に、患者様とスタッフの動線を考慮したゾーニングは、業務効率の向上と患者様満足度の向上に大きく貢献します。

2. LGS造作壁とパーティション:コスト、工期、機能性比較

間仕切りにはLGS造作壁とパーティションという主な選択肢があります。それぞれの特性を理解し、薬局のニーズに最も合致する方を選択することが重要です。

(1)LGS造作壁(軽量鉄骨下地+石膏ボードなど)

  • 特徴: 建築工事の一部として現場で組み立てられる壁で、一般的に天井まで届く「壁」として認識されます。
  • コスト: 材料費と施工費がかかりますが、デザインの自由度が高く、内装仕上げ材によってコストは大きく変動します。一般的なオフィスビルでは最も標準的な間仕切り方法です。
  • 工期: 現場での造作工事となるため、設計・施工に時間を要します。特に、湿式工法(パテ処理、塗装など)が含まれる場合、乾燥期間も必要となり、工期は長くなりがちです。
  • 機能性:
    • 遮音性: 適切な断熱材や石膏ボードの積層により、高い遮音性を確保できます。
    • 耐震性: 建築構造と一体化するため、比較的高い耐震性を持たせることが可能です。
    • デザイン性: クロス、塗装、パネル材など、様々な仕上げ材を選択でき、自由なデザイン表現が可能です。
    • 撤去・移設: 構造物の一部であるため、撤去や移設には解体工事が必要となり、費用と時間がかかります。原状回復義務があるテナントの場合、その費用も考慮する必要があります。
    • 配線・配管: 壁内に配線や配管を隠蔽できるため、見た目がすっきりします。

(2)施工型パーティション(アルミ、スチール、ガラスなど)

  • 特徴: 工場で生産されたパネルを現場で組み立てることで間仕切りを形成します。大きく分けて、スチールパーティション、アルミパーティション、ガラスパーティションなどがあります。
  • コスト: LGS造作壁と比較して、初期費用は同等かやや高くなる場合がありますが、工期の短縮や将来的な移設の容易さを考慮すると、トータルコストで優位に立つことがあります。特に、移設やレイアウト変更の可能性がある場合、長期的なコストメリットは大きいです。
  • 工期: 乾式工法であるため、現場での組み立て作業が中心となり、LGS造作壁に比べて格段に工期が短縮されます。これにより、開業までの時間を短縮し、賃料発生期間の無駄を省くことができます。
  • 機能性:
    • 遮音性: パネルの種類や内部構造(吸音材の有無など)によって異なりますが、JIS規格に基づいた遮音性能を持つ製品が多く、LGS造作壁に匹敵する、またはそれ以上の遮音性を実現できるモデルもあります。特に調剤室や相談室など、高い遮音性が求められる場所では、二重ガラス構造や、パネル内にロックウールなどの吸音材を充填したタイプが有効です。
    • 耐震性: 独立した構造を持つため、地震の揺れを吸収する機能を持つものや、天井ブレースで固定することで安定性を高めるタイプもあります。
    • デザイン性: パネルのカラー、素材(木目調、石目調など)、ガラスの種類(透明、フロスト、型板など)が豊富に揃っており、モダンからナチュラルまで幅広いデザインに対応可能です。全面ガラスパーティションは、開放感と採光性を両立させ、空間を広く見せる効果があります。
    • 撤去・移設・再利用: 最大のメリットは、解体・移設が容易であり、パネルの再利用が可能な点です。将来的なレイアウト変更や移転の際に、大幅なコスト削減と廃棄物削減に貢献します。テナント契約における原状回復義務も、パーティションであれば比較的容易にクリアできる場合が多いです。
    • 配線・配管: パネルの内部に配線を通すダクト機能を持つパーティションもあり、電源やネットワークケーブルの配線をスマートに処理できます。

薬局の間仕切りにおける選択のポイント>

項目LGS造作壁パーティション薬局への推奨ポイント
コストデザインにより変動、撤去費用高初期費用は同等かやや高、移設・再利用で長期コスト低減将来的なレイアウト変更や移転の可能性を考慮し、トータルコストで判断。テナント物件ではパーティションが有利な場合が多い。
工期長い(湿式工法含む)短い(乾式工法)開業までの期間短縮は、賃料や運転資金の節約に直結。パーティションが圧倒的に有利。
機能性高遮音・堅牢・意匠性の自由度遮音・移設再利用の可変性・短工期移設・再利用性、工期短縮、レイアウト変更の柔軟性から、特にテナントの薬局には、パーティションが有利。
遮音性高い(断熱材併用)製品によるが、高い遮音性を持つモデルも豊富調剤室、相談室、事務室など、プライバシー保護や集中が必要な場所は、遮音性の高いパーティションを推奨。
デザイン性自由度高、完全造作感多彩なカラー・素材、開放感あるガラスタイプも薬局のブランドイメージに合わせて選択。清潔感、安心感を演出するデザインが望ましい。
撤去・移設解体必要、再利用不可解体・移設容易、再利用可能テナント物件では原状回復義務があるため、移設・再利用が容易なパーティションが圧倒的に有利。
配線壁内隠蔽パネル内ダクト機能付きありスマートな配線処理は、清潔で安全な薬局空間に不可欠。
清潔性表面仕上げによるフラットで清掃しやすい素材が多い衛生管理が重要な薬局では、清掃しやすさも重要な選定基準。

テナントでの開業をご予定の場合、将来的な移転やレイアウト変更の可能性、そして原状回復義務を考慮すると、パーティションは非常に有効な選択肢となります。特に工期の短縮は、賃料発生期間の圧縮に直結するため、開業後の早期安定経営にも寄与します。

3. 各スペースのパーティション活用とレイアウト提案

ご要望いただいた各スペースに対して、パーティションをどのように活用し、最適なレイアウトを実現するか具体的な提案をさせていただきます。

(1)待合室(受付・お渡しカウンター)

  • 受付・お渡しカウンター: 高さ1.1m程度の半透明またはフロストガラスのローパーティションでカウンターを区切り、患者様のプライバシーを確保しつつ、スタッフとの視覚的な繋がりは保ちます。カウンター上部には、飛沫防止のためのアクリルまたはポリカーボネート製の簡易パーティションを設置します。
  • 個別相談スペース: 待合室の一角に、高さ1.8m程度の不透明なパネルパーティション(例えば、木目調や石目調の化粧鋼板パネル)で囲まれた小規模な相談ブースを設けます。完全個室にする必要がなければ、上部を開放し、ブース形式にすることで、圧迫感を軽減しつつ、プライバシーを確保できます。吸音性のあるパネルを選ぶと、会話の漏れをより防げます。
  • キッズスペース(任意): 待合室にキッズスペースを設ける場合、低いカラフルなパーティションで囲むことで、子供たちが安全に遊べるエリアを明確にし、視覚的に楽しい空間を演出できます。

(2)調剤室

  • セキュリティと清潔性: 調剤室は、完全に密閉された空間とする必要があります。ここでは、遮音性と防火性にも優れたスチールパーティションを推奨します。天井までのフルハイトタイプで、出入り口は施錠可能なドアを設けます。
  • 内部レイアウト:
    • 調剤台エリア: 中央に配置し、左右に薬剤棚や設備を配置することで、薬剤師の動線を最小限に抑えます。
    • 監査・薬歴管理エリア: 調剤台の近くに、パソコンや薬歴を管理するためのデスクスペースを設けます。ここもパーティションで軽く区切ることで、集中力を高めることができます。
    • 高頻度薬剤棚: 使用頻度の高い薬剤は、調剤台から手の届く範囲に収納できるよう、システム収納と組み合わせたパーティションプランも有効です。
  • 採光と視認性(任意): 調剤室内部の状況を外部から把握したい場合は、一部にガラスパネルを組み込んだパーティションを選択することも可能です。ただし、患者様の個人情報保護の観点から、外部からは見えにくい加工(フロスト加工など)を施すか、物理的なブラインドなどで対応が必要です。

(3)休憩室

  • プライベート空間の確保: スタッフがリラックスできるよう、外部からの視線や騒音を遮断できる不透明なパネルパーティションで区切ります。天井までのフルハイトタイプで、遮音性の高いものを選びます。
  • 多目的スペース: 食事や休憩、簡易ミーティングにも使えるように、テーブルと椅子を配置します。必要に応じて、簡易的なキッチンカウンターをパーティションでL字型に囲むことも可能です。

(4)スタッフのデスクワーク用事務室

  • 集中と協調: 全体をパーティションで囲み、集中できる空間を確保します。内部は、デスクごとにローパーティション(高さ1.2m~1.6m程度)で仕切ることで、個人のプライバシーを保ちつつ、必要に応じてコミュニケーションも取りやすい環境を構築します。
  • 収納スペース: 書類や備品を効率的に収納できるよう、パーティションと一体型の収納ユニットや壁面収納、書類ロッカーを検討します。

(5)風除室

  • 独立した空間: ガラスパーティションと自動ドアまたは手動ドアを組み合わせて、独立した空間を形成します。全面ガラスにすることで、閉塞感なく、明るく開放的な入り口を演出できます。
  • ●機能性: 防風、防塵、温度管理の役割を果たすため、密閉性の高い構造とします。必要であれば、内部に空気清浄機を設置するスペースも確保します。

具体的なレイアウト提案のポイント

  • 動線計画: 患者様、薬剤師、スタッフそれぞれの動線を明確にし、交差を最小限に抑えることで、スムーズな業務運営と患者様へのサービス提供を実現します。特に、受付→待合→調剤→お渡し→退室の一連の流れを考慮します。
  • プライバシーの確保: 調剤室、相談室、休憩室、事務室など、プライバシーを保護すべき空間は、遮音性の高い不透明なパーティションで囲むことを基本とします。
  • 採光と開放感: 待合室や事務室など、明るさや開放感が求められる場所では、ガラスパーティションや一部にガラス窓を設けることで、自然光を取り入れ、快適な空間を演出します。
  • フレキシブルな対応: 将来的な増員やサービス内容の変更に備え、移設が容易なパーティションは、長期的な視点でのコストパフォーマンスに優れています。
  • バリアフリー: 患者様の年齢層や状態を考慮し、動線の通路幅の確保、フラットな床、スライドドアなど、バリアフリー対応を前提としたレイアウトを心がけます。

4. 長期的な視点での投資対効果とメンテナンス

間仕切り工事は、一度行えば長期的に使用されるため、初期費用だけでなく、長期的な視点での投資対効果を考えることが重要です。パーティションは、この点でLGS造作壁に比べて多くのメリットを持ちます。

(1)初期投資の検討

  • 見積もりの比較: LGS造作壁とパーティションの見積もりを取る際は、単価だけでなく、以下の項目も比較検討してください。
    • 工期: 工期短縮による開業までの賃料コスト削減額。
    • 付帯工事: 電気工事、空調工事、消防設備工事など、間仕切りに伴う付帯工事の有無と費用。パーティションは天井までの設置となるため、空調や消防設備の移設・増設が必要となる場合があります。しかし、多くの場合、パーティションメーカーや専門業者が一括で対応可能なため、複数の業者に発注する手間やコストを削減できる可能性があります。
    • 原状回復費用: 将来的な退去時にかかる解体・撤去費用と、廃棄物処理費用。パーティションは再利用可能なため、LGS造作壁に比べて原状回復費用を大幅に抑えられる可能性があります。
  • 減価償却: どちらの間仕切り方法を選択するかによって、資産としての計上方法や減価償却の期間が異なる場合があります。税理士と相談し、最も有利な方法を選択することも検討材料です。

(2)フレキシビリティと将来性

  • レイアウト変更の容易さ: 薬局の運営状況は、患者様のニーズ、地域の医療体制の変化、スタッフの増減など、様々な要因で変化します。パーティションは、これらの変化に対応してレイアウトを柔軟に変更できる点が大きな強みです。
    • 例えば、将来的にオンライン診療の需要が増加した場合、待合室の一部を個室ブースに変更したり、調剤室の拡張が必要になった際にも、既存のパーティションを移設・増設することで、大規模な工事をせずに対応が可能です。
    • スタッフ数の増加に伴い、事務室のデスク配置を変更したり、新たに個別の執務スペースを設けたりする際も、パーティションであれば短期間で対応できます。
  • 移転時の再利用: テナントからの移転を検討する際、LGS造作壁は基本的に解体廃棄となりますが、パーティションは解体して新たな場所で再設置することが可能です。これは、移転コストの大幅な削減に繋がり、サステナビリティの観点からも優れています。

(3)メンテナンスと耐久性

  • 日常の清掃: 薬局という特性上、清潔な環境の維持は必須です。パーティションは、表面がフラットで清掃しやすい素材が多く、日常の清掃が容易です。
  • ●耐久性: 高品質なパーティションは、長期間にわたってその機能と美観を保つことができます。特にスチールパーティションは、傷がつきにくく、耐火性にも優れているため、長期的な使用に適しています。
  • ●部品交換と修理: 万が一、パーティションの一部が破損した場合でも、パネル単位での交換や部品の修理が比較的容易に行えます。LGS造作壁の場合は、壁全体を補修する必要がある場合が多く、手間とコストがかかります。

(4)音環境への配慮

薬局において、音環境は非常に重要です。

  • 患者様のプライバシー保護: 受付での会話や、調剤室での電話応対などが待合室に漏れ伝わらないよう、遮音性の高いパーティションを選定することが重要です。特に、機密性の高い会話が行われる相談スペースや調剤室には、JIS規格で定められた遮音性能(例:Dr-30以上)を持つパーティションを選択することで、安心して業務に集中できる環境を構築できます。
  • スタッフの集中力: 調剤室や事務室では、作業に集中できる静かな環境が必要です。パーティションの選定においては、遮音性能だけでなく、吸音性能(パネル表面の素材や内部構造による)も考慮に入れると、より快適な音環境を実現できます。
  • 音の反響抑制: 待合室など広めの空間では、パーティションを効果的に配置することで、音の反響を抑制し、会話の聞き取りやすさを向上させることができます。吸音性のある素材を部分的に採用することも有効です。

(5)デザインとブランドイメージ

パーティションは、その機能性だけでなく、薬局のブランドイメージを形成する重要な要素でもあります。

  • 清潔感と信頼性: 白や淡い色調のパーティションは、清潔感と安心感を与えます。ガラスパーティションは、開放感と同時にモダンでプロフェッショナルな印象を与え、患者様に信頼感をもたらします。
  • 温かみと癒し: 木目調のパーティションや、アクセントカラーを取り入れたパーティションは、温かみのある空間を演出し、患者様の緊張を和らげる効果が期待できます。
  • ●照明計画との連動: パーティションの配置に合わせて照明計画を最適化することで、空間の明るさや雰囲気をコントロールし、より機能的で魅力的な薬局空間を創造できます。例えば、調剤室は明るく均一な照明を、待合室は間接照明を組み合わせて落ち着いた雰囲気を演出するなど、各エリアの目的に合わせた照明計画とパーティションデザインを連動させることが重要です。

5. テナント出店の落とし穴:C工事と消防法規のポイント

 テナントビルや商業施設への薬局出店は、路面店とは異なる特有の注意点があります。特にC工事の内装制限と消防法は、間仕切り設計に大きく影響し、見落とすと予期せぬコスト増や工期遅延につながる可能性があります。

(1)テナント工事区分C工事の理解

テナントの賃貸借契約では、工事区分がA・B・Cの3つに分類されるのが一般的です。

  • ●A工事: オーナー(貸主)負担で、建物の躯体や共用部分の工事。
  • ●B工事: テナント(借主)負担だが、オーナーが指定する業者で施工する工事。電気幹線設備や空調排煙設備の一部などが該当し、テナント側で自由に業者を選べないため、コストが高くなる傾向があります。
  • ●C工事: テナント(借主)負担で、テナントが自由に業者を選んで施工できる工事。内装仕上げ、間仕切り、照明、コンセントの増設などが該当します。

薬局の間仕切り工事は、基本的にはC工事に該当します。しかし、天井までのフルハイトパーティションを設置する場合、既存の空調設備や消防設備(感知器、スプリンクラー、誘導灯など)の位置変更が必要になることがあります。これらの設備工事はB工事に該当することが多く、オーナー指定業者による施工が必要となります。そのため、間仕切り計画を立てる際は、C工事範囲だけでなく、それに伴うB工事の発生の有無と費用を事前に確認することが極めて重要です。

例えば、調剤室をパーティションで完全に区切る場合、その部屋の中に新たに火災感知器やスプリンクラーの設置が必要になることがあります。これはB工事としてオーナー指定業者に依頼することになり、C工事の間仕切り費用とは別途費用が発生します。事前に確認しないと、思わぬ出費となるだけでなく、オーナーとの調整に時間がかかり、開業スケジュールに影響が出る可能性もあります。

(2)消防法規と間仕切り設計のポイント

薬局は不特定多数の人が利用する施設であり、医薬品という可燃物も取り扱うため、消防法規による規制を厳守する必要があります。特に間仕切り設計においては、以下の点が重要になります。

  • 防火区画の維持: 建物全体が持つ防火区画(火災の延焼を防ぐための区画)を損なわない設計が求められます。天井までのパーティションを設置する場合、既存の防火区画をまたぐ位置に設置する際には、その区画の耐火性能を維持するよう、パーティション自体にも防火性能(例:特定防火設備認定品、不燃材)が求められることがあります。スチールパーティションの中には、これらの認定を受けた製品があり、防火区画を構成する間仕切りとして利用できます。
  • ●避難経路の確保: 災害時に安全かつ迅速に避難できるよう、避難経路(通路幅、出口の数など)を適切に確保する必要があります。間仕切りによって通路が狭くなったり、避難口が分かりにくくなったりしないよう、レイアウト段階から消防署と協議し、確認を取ることが不可欠です。
  • ●消防設備の移設・増設: 間仕切りを設置することで、既存の火災感知器、スプリンクラー、自動火災報知設備の感知範囲が遮られたり、誘導灯の視認性が悪くなったりすることがあります。この場合、新たな区画ごとにこれらの設備を移設したり、追加で設置したりする必要があります。これは先述のB工事に該当することが多く、事前に計画に盛り込むべき項目です。
    • 感知器: 新たに部屋を設ける場合、その部屋にも感知器の設置が必要です。
    • スプリンクラー: 一定規模以上の建物では、各部屋への設置が義務付けられています。間仕切りで区切られた空間にスプリンクラーヘッドが届かない場合は増設が必要です。
    • 誘導灯: 避難方向を示す誘導灯が、間仕切りによって隠れてしまう場合は、見やすい位置への移設や追加設置が必要です。
    • 排煙設備: 面積によっては排煙設備の設置が義務付けられている場合があります。間仕切りで部屋を区切ることで、排煙経路が変わる可能性もあります。
  • ●消防計画の変更: 間仕切りによるレイアウト変更は、建物の消防計画の見直しを必要とする場合があります。所轄の消防署への届け出が義務付けられているため、設計段階から消防法規の専門家(設計士や施工業者)と連携し、必要な手続きを漏れなく行うことが重要です。

間仕切.jpでは、単に間仕切りを設置するだけでなく、こうしたテナント工事区分や消防法規に関する知見を持つ専門家が、物件の調査段階からご相談に応じます。お客様が安心して薬局開業に臨めるよう、最適な間仕切りプランをご提案するとともに、関連するB工事や消防申請についても適切なアドバイスとサポートを提供いたします。

まとめ|テナント型薬局に最適な空間設計への第一歩

 薬局の開業・移転における間仕切り計画は、単なる空間の区切り以上の意味を持ちます。患者様の安全と快適性、スタッフの業務効率と働きやすさ、そして薬局の長期的な経営戦略に直結する重要な投資です。

LGS造作壁にはその良さがありますが、テナント物件での開業を検討されている薬局やクリニックにとって、パーティションは、コスト、工期、機能性、そして将来的なフレキシビリティの全てにおいて、非常に魅力的な選択肢となり得ます。

  • 工期短縮による早期開業と賃料節約
  • 優れた遮音性・デザイン性による快適な空間創造
  • 容易なレイアウト変更と移転時の再利用によるコスト削減

これらのメリットは、貴薬局の長期的な経営に大きく貢献することでしょう。

間仕切.jpでは、これまで数多くの薬局様の空間設計に携わってまいりました。お客様の具体的なご要望を丁寧にお伺いし、物件の特性や予算、将来の展望を考慮した上で、最適なパーティションプランとレイアウトをご提案させていただきます。

まずは、お気軽にご相談ください。空間コンサルティング専門スタッフが、貴薬局の理想の実現に向けて、設計から施工、アフターサービスまで一貫してサポートさせていただきます。お問い合わせ、心よりお待ちしております。

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