目次
- 1.2025年6月、労働安全衛生規則改正へ:「熱中症対策」が明文化された背景
- 2.熱中症対策にパーティション:ファクトリーブースによる温熱環境改善
- 3.ファクトリーブースという選択:従業員を守るための半恒久的ソリューション
- 4.内装業者が伝えるべき、熱中症対策における「安全と快適性」の両立
- 5.建物管理業者が考えるべき熱中症対策
- 6.間仕切.jpのパーティション&ファクトリーブース導入事例と今後の選び方
2025年6月16日(月)、環境省と気象庁は、和歌山県、香川県、鹿児島県奄美地方、そして沖縄県八重山地方を対象に、熱中症警戒アラートを発表しました。
特に注目すべきは、沖縄以外の地域での発表が今シーズン初めてであるという点です。つまり、例年に比べても早期かつ広域に熱中症のリスクが顕在化していることがわかります。これにより、工場や倉庫といった高温多湿な作業環境で働く労働者の健康と安全をいかに守るかが、緊急かつ喫緊の課題として改めて浮かび上がっています。
2025年6月1日施行の「労働安全衛生規則 改正(第612条の2)」では、熱中症のリスクがある職場において、事業者が講ずべき具体的な措置が法的に明文化・強化されました。これまで「努力義務」として捉えられていた熱中症対策が、いよいよ「義務化」され、違反した場合には罰則の対象ともなり得る体制が整備されたのです。
しかし、こうした法改正を前にしても、工場や倉庫業の経営者やオーナー様、プロパティマネージメントう業者様からの相談には、ある種の“誤解”も根強く残っているのが実情です。根本的な対策には、空間全体を見直す“設計力”が求められます。本コラムでは、内装業者として現場からよく寄せられる相談内容とその誤解をひもときながら、本来果たすべき内装業者の役割について深掘りしていきます。
今月6月は「環境月間」でもあります。熱中症リスクの高まりと最新の法改正情報を踏まえつつ、工場や倉庫での実践的な熱中症対策として、パーティションやファクトリーブースがどのように役立つのかを解説していきます。
これから夏本番を迎える今こそ、法令順守を前提とした、「従業員の人命と企業の生産性を守る環境づくり」が求められています。工場・倉庫の熱中症対策を、「内装設計的視点」から見直すきっかけになれば幸いです。

1.2025年6月、労働安全衛生規則改正へ:「熱中症対策」が明文化された背景
2025年6月、労働安全衛生規則の一部が改正(=労働安全衛生規則第612条の2の新設)され、「熱中症を生ずるおそれのある作業」に関する事業者の具体的な対策義務が強化されます。
労働安全衛生規則
(熱中症を生ずるおそれのある作業)
第六百十二条の二 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、当該作業に従事する者が熱中症の自覚症状を有する場合又は当該作業に従事する者に熱中症が生じた疑いがあることを当該作業に従事する他の者が発見した場合にその旨の報告をさせる体制を整備し、当該作業に従事する者に対し、当該体制を周知させなければならない。2 事業者は、暑熱な場所において連続して行われる作業等熱中症を生ずるおそれのある作業を行うときは、あらかじめ、作業場ごとに、当該作業からの離脱、身体の冷却、必要に応じて医師の診察又は処置を受けさせることその他熱中症の症状の悪化を防止するために必要な措置の内容及びその実施に関する手順を定め、当該作業に従事する者に対し、当該措置の内容及びその実施に関する手順を周知させなければならない。
これは、高温多湿の職場環境が招く労働災害の増加を受けたものです。特に工場や倉庫などの空調管理が難しい現場では、作業者が熱中症により体調を崩し、生産活動が中断される事例が増えており、厚生労働省はこの問題への早急な対処を求めています。
改正のポイントは、労働安全衛生規則第612条の2の見直しです。これまで努力義務とされていた熱中症対策が、以下の通り明文化されました。
- ①WBGT(暑さ指数)値の定期的な把握と記録
- ②作業の中断や休憩の義務化(特にWBGT値が28℃を超える場合)
- ③作業員への教育訓練、飲料水や塩分の提供
これらに違反した場合、労働安全衛生法第120条に基づき、50万円以下の罰金や労働災害としての報告義務が課されるだけでなく、企業イメージの毀損や業務停止命令のリスクも発生します。単なる規則の改正ではなく、現場の根本的な安全体制が問われる改正といえます。
2.熱中症対策にパーティション:ファクトリーブースによる温熱環境改善
熱中症対策として、これまで多くの企業では扇風機やスポットクーラーの導入、水分補給の推奨などが中心でした。
しかし、これらの手段では十分な効果が得られないケースが多く、特に作業動線が長く、開放的な構造を持つ工場・倉庫では、冷気が拡散してしまう問題がありました。
そこで近年注目されているのが、施工型パーティションによる空間のゾーニングと環境制御です。具体的には以下のような効果が期待できます。
- ①熱源(機械、外気取り込み口など)を区画し、作業スペースと物理的に分離する
- ②空調効率を高め、局所的な冷却効果を維持する
- ③作業者の動線を最短化し、熱負荷の軽減につなげる
工場や倉庫といった現場での熱中症対策において、施工型パーティションは従来の「空間を区切るための単なる間仕切り」という役割を超えた、新たな機能と価値を備えた“空間を設計し直すためのソリューション”として注目されています。特に天井付のファクトリーブースによる個室設置は熱中症対策に有効な内装間仕切です。
空調の効きづらい大空間や、熱源の近くで行われる作業、外気温の影響を受けやすい半屋外の作業エリアなどでは、全体の温度管理が困難なため、局所的な環境制御が必要不可欠になります。そこで効果を発揮するのが、パーティションによるゾーニングです。
例えば、作業員の動線や機械設備の稼働状況を踏まえて、作業エリアをパーティションで区画し、冷房効率を高めるためのブース空間を構築することで、最小限のエネルギーで最大限の冷却効果を生み出すことが可能となります。これにより、工場全体に空調を無理に効かせる必要がなくなり、エネルギーコストの抑制にもつながります。また、作業者が長時間滞在する場所を優先的に快適にすることで、身体への負荷を軽減し、熱中症のリスクを根本から低減することができます。
さらに、近年では遮熱・断熱性能を備えた素材を活用したパーティションも登場しており、外気の熱や太陽光の輻射熱を遮る工夫がなされています。このように、単に空間を区切るのではなく、そこに滞在する人の身体的負荷や環境要因を踏まえ、「どのような環境であれば人が安全に働けるのか」という視点から設計されるパーティションは、まさに“熱中症対策のための空間ソリューション”と言えるでしょう。
職場環境における熱中症は、対策の遅れがそのまま労災や生産停止リスクにつながる重大な経営課題です。だからこそ、従来の発想にとらわれない空間の再設計と、熱中症対策と空間効率化を同時に叶えるパーティションの導入は、企業にとって非常に有効な手段であるといえます。
3.ファクトリーブースという選択:従業員を守るための半恒久的ソリューション
さらに一歩進んだ対策として注目されるのが、ファクトリーブースの導入です。
これは、工場内の一部をパネルで囲み、独立した空間として空調を集中させる仕組みです。製品組立や精密作業、検査などを行うエリアを限定冷房することで、コストを抑えつつ快適な作業空間を実現します。
ファクトリーブースのメリットは多岐にわたります。
- ①冷気が逃げにくいため、空調効率が大幅に向上
- ②ブース内の気温や湿度を安定的に管理できる
- ③遮音・防塵効果により作業品質や集中力も向上
例えば、間仕切.jpが施工を行った倉庫では、ファクトリーブース内のWBGT値が常時26℃以下に保たれ、従業員の不調申告が大幅に減少。さらに作業効率も10%以上向上するなど、複数の成果が得られました。
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導入は短期間で完了するケースが多く、可動式・固定式など柔軟な設計も可能です。スポットクーラーのような一時的措置ではなく、「法改正を見据えた恒久対策」として、今後さらにニーズが高まると予想されます。
4.内装業者が伝えるべき、熱中症対策における「安全と快適性」の両立
熱中症対策の相談でよくある“3つの誤解”と、内装業者が果たすべき本当の役割
近年、猛暑の常態化により、工場や倉庫といった高温多湿の現場環境では熱中症のリスクが急速に高まっています。とくに、空調が行き届きにくい大空間や、屋根や外壁が熱をもいやすい構造や材質であるような建物では、太陽光の輻射熱が内部温度を大きく上昇させ、作業員の身体に過酷な環境をもたらしています。そのような中で、内装業者には単なる仕上げ工事ではなく、労働者の命と生産性を守るための「空間づくりの提案者」としての責任が求められています。
よくある相談①「空調機器を増設すれば解決するのでは?」
エアコンなど機器を増設しても、冷気が分散してしまうような広い空間では効果が薄く、電力コストが増すだけというケースも少なくありません。ここで内装業者が果たすべき役割は、冷気を無駄なく集中的に活用できるゾーニングの設計、つまり"空間の整理と仕切り"を提案することです。
よくある相談②「換気さえすれば大丈夫?」
たしかに換気は重要ですが、外気温が高ければ空気を入れ替えても熱気しか入ってこず、かえって逆効果になることもあります。こうしたケースでは、遮熱・断熱素材を活用した内装施工や、熱源の遮断、空間区画による作業エリアの環境分離といったアプローチが有効です。
よくある相談③「熱中症対策=夏場だけの対応でいいの?」
春や秋でも倉庫内は高温になることがあり、また突発的な熱波にも備える必要があります。熱中症対策は“季節限定のオプション”ではなく、“通年で維持されるべき環境品質の基本設計”として捉えるべきです。
これらの誤解を解消しつつ、適切な設計提案を行うことで、内装業者は工場・倉庫における熱中症対策のプロフェッショナルとして、クライアント企業の信頼を獲得することができると考えます。
5.建物管理業者が考えるべき熱中症対策
「建物自体の環境的対策」と「利用者・入居者への人的配慮」
近年の猛暑傾向を受け、建物の安全性・快適性を総合的に管理する建物管理業者(BM:ビルマネジメント業者)にとっても、熱中症対策は新たな重要課題となっています。
とりわけ、工場や倉庫、商業施設やオフィスビルなどのバックヤード、バックオフィスでは、単なる清掃・修繕業務にとどまらず、「環境リスクの先読みと予防措置業務」が求められる時代です。建物管理業者が取り組むべき熱中症対策には、大きく2つの視点があります。ひとつは「建物自体の環境的対策」、もうひとつは「利用者・入居者への人的配慮」です。
まず環境的な対策としては、空調設備の点検・清掃・能力適正のチェックが最優先となります。経年劣化による冷却効率の低下や、フィルターの目詰まり、換気ファンの故障などは、室内温度上昇の要因になります。また、屋上や壁面の遮熱塗装・断熱材の使用状況、窓まわりの遮光対策(ブラインド・フィルム)、さらに近年注目されるグリーンカーテンや外付け庇の導入も、建物全体の温熱環境を改善するポイントです。
次に、人的な配慮として重要なのは、入居テナントや作業スタッフへの情報提供と共有体制の整備です。具体的には、気象庁や環境省が発信する「熱中症警戒アラート」を管理会社側で一元管理し、日々の情報を迅速にビル利用者に通知できるようにする、あるいはWBGT値の簡易測定器を設置し、警戒ラインに達した際には共用部のアナウンスや作業スケジュールの調整を促す運用ルールを構築することが考えられます。
さらに、建物の中でも高温になりやすいバックオフィスとなる監視室、地下室や機械室、屋上などに出入りする協力会社の作業員に対しては、熱中症リスクを説明した上で、作業時間や休憩の調整を促す管理者としての立場が重要になります。
建物管理業は、単なる建物維持業務から「人と建物を守る安全環境のマネジメント」へと役割が進化しています。熱中症対策は、まさにその象徴ともいえる取り組みです。法改正により熱中症リスクが労働安全の観点からも注目される中、建物管理業者には、設備管理・情報提供・空間改善の3方向から、多層的な対策を講じる責任が今後ますます求められていくでしょう。
空調を集中的に効かせるためのクールゾーン(冷房ブース)
そこでも有用なのが、施工型パーティションの導入です。施工型パーティションは、単なる間仕切りではなく、熱源からの距離を取る作業空間の分離や、冷房効率を高めるための空間区画に活用できます。特に、作業頻度が高いエリアや集中作業が求められる場所では、空調を集中的に効かせるためのクールゾーン(冷房ブース)としての設計が可能です。また、防音・防塵仕様のパネルを選べば、快適性も向上します。さらに、扉や開口部の位置を工夫することで換気の動線確保にも対応できます。パーティションによる「熱リスク管理」は、設備投資に比べて低コストで柔軟性が高く、現場に即した環境改善策として注目されています。
6.間仕切.jpのパーティション&ファクトリーブース導入事例と今後の選び方
現場環境に即した設計と施工|注意すべきポイントと導入事例
工場や倉庫の熱中症対策において、もっとも大切なのは「現場の実情に即した設計」を行うことです。
例えば、天井が高い構造の場合、天井付近に熱がこもりやすくなります。これを解消するには、高所に排気ファンを設置するだけでなく、天井付近と作業エリアをパーティションで区切ることで冷気の滞留を防ぎ、体感温度を下げることができます。
また、倉庫内の作業場所が常に変化するようなケースでは、移設も可能なファクトリーブースを導入することで、柔軟かつ効率的な空間利用が可能になります。これにより、必要な場所にだけ冷房効果を集中させることができ、省エネにもつながります。さらに、パネル素材の選定にも注意が必要で、遮熱性、断熱性、防塵性、防音性など、多面的な機能性を考慮して選ぶことで、熱中症対策と同時に作業環境全体の質を高めることができます。
導入事例として、ある精密機器工場では、夏場になると従業員の熱中症による欠勤が相次ぎ、生産ラインが停止するリスクを抱えていました。そこで、既存の大空間をゾーニングし、主な作業エリアをファクトリーブースで囲い、スポットクーラーとの併用による冷却効率の最大化を図った結果、翌年の夏には熱中症による欠勤がゼロとなり、生産性も約15%向上したという成果が出ています。
また、物流倉庫においては、遮熱性の高い天井材と壁材を新たに採用し、搬出入ゲート周辺の動線を簡易ブースで整備したことで、真夏の庫内温度が平均で5℃以上低下しました。作業者のストレス軽減とともに、搬出入作業のスピードも向上し、物流効率の改善にもつながったのです。
これらの事例が示すように、内装業者としての熱中症対策は単なる設備導入にとどまらず、空間そのものを「人の身体感覚」に合わせて再構成するという発想が重要です。現場に合わせた柔軟な提案と施工、そしてクライアントの課題に寄り添ったアドバイスこそが、今後の内装業者に求められる真の価値となっていくでしょう。
間仕切.jpでは、これまで多数の工場・倉庫向け熱中症対策プロジェクトを手がけてきました。以下に、代表的な事例をご紹介します。

● 物流倉庫:夏季WBGT値33℃→29℃へ改善
パーティションによるゾーニングと強制換気設備の併用により、庫内の通気性と遮熱性を両立。作業者の休憩頻度が減り、作業効率が向上。
● 金属加工工場:作業室検品エリアをファクトリーブース化
検品ラインをパネルで囲い、外気への熱放出を遮断。空調機をブース内に設置することで、温度上昇を抑制。
導入時のチェックポイントとしては、
- ①施工対象面積と熱源の位置関係
- ②パネル材質の断熱・防音性能
- ③現場動線と業務フローの整合性
また、パーテーションやブースの導入に対しては、自治体や中小企業庁の「職場環境改善助成金」などが活用可能な場合もあります。設備投資におけるコストダウンのチャンスとして、クライアント様にも有益となる積極的な情報収集が重要です。
これからの環境創りでは、「空間を管理する力」が求められます。それは、「課題解決」という設計力、プラス「施工力」という現場力です。間仕切/jpでは内装施工業者、設計会社、管理会社様のパートナーとして、お客様の課題解決に向けた最適なご提案と施工管理をご提供いたします。
法改正の波に乗り遅れず、作業者と企業の未来を守るためにも、間仕切.jpのソリューションをぜひご検討ください。

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